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古川 篤さん

話は少しさかのぼるんですけど、八戸ハマリレーションプロジェクトっていうのが元々「世界で一番地元の魚を愛する街八戸を実現させよう」ってスローガンで始めたものなんです。きっかけは震災があって「八戸から元気を届けたい!」みたいな単純な気持ちだったんですけど、普通こういう時って「どんどん地域の外に発信して、観光客の人たちがたくさん来てくれるようになれば、地元の人たちも潤うし、豊かになる」とかって考えると思うんです。本来、当たり前の考え方ですし。でも、「ちょっと待てよ?」って思いまして。

そもそも、地元の人がどのくらい地元のこと知っているんだろうって考えたわけです。で、聞いてみると灯台下暗しというか、地元の人ほど地元のことを知らない。「八戸の魚介と言えば?」ときくと大体「イカ」と「サバ」。その先が出てこないんです。「サーモン」なんて言う人もいるんですよ(笑)。

でも実は、八戸って600種類くらいの魚がとれるんです。

 

W えー!そんなに!

 

カレイとかヒラメとかアンコウとか。しうり貝って言って、ムール貝とあまり変わらないようなのも取れるんですよ。

 

W 八戸でムール貝取れるんですか!?(と発言したのは八戸出身のメンバー)

 

そう、知らなかったでしょ。ハマの人からすれば、魚介っていうのは当たり前にそこにあって、目新しいものではなくて地元では違和感なく普通に食べられているもの。

 

でも、そこで止まってしまうのがもったいないと思ったわけですよ。八戸のおいしい魚を、外に発信する前に、まずは地元の人たちでたくさん知ろう、楽しもうって。何が言いたいかっていうと、八戸ブイヤベース自体は、外に発信するのが目的だったわけではなく、まず内輪で騒ぐってのがしたかったんです。だから今、こうやって外の人が知ってくれていてインタビューにも来てくれるっていうのが、嬉しいんです。最初は内輪の騒ぎでも、「なんだかハマの方がエライ騒がしいな、なんだか楽しそうだな」、それで来てみて「楽しいぞ!」ってなれば、素敵でしょう。

 

イメージでいえば、地域色の強いスポーツチーム。例えば、楽天が優勝した時なんかは野球に詳しい人も詳しくない人もみんなで騒いでいて、国分町(仙台市内の歓楽街)なんかに行けばみんな野球の話をしているわけです。で、みんな口をそろえて言うんです。「楽天最高!仙台最高!」って。それが、八戸で、ブイヤベースで同じような事が起きたら面白くない?「ブイヤベース最高!八戸最高!」ってね。

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1976年生まれ、青森県弘前市出身。地元・弘前大学卒業後、小売・流通業界で10年間従事。東北各地にて店舗運営や売場構成等の管理業務を歴任後、2008年八戸市へ移住し、八戸缶詰(株)へ所属し、企画業務を担当。

2011年、東日本大震災を契機に、特定の組織に属さない任意団体「八戸ハマリレーションプロジェクト」を発起人として水産業界有志と共に立上げ、八戸ブイヤベース他様々な企画を実施。

会社では企業グループ内・味の加久の屋の鯖缶詰「八戸鯖」や「いちご煮」のCMリニューアルなどの企画を行なう傍ら、社外団体の企画・運営を同時に行なっている。

 

八戸ハマリレーションプロジェクトHP:http://hhrp.jp/

こうやって話していると、お寿司も焼魚も割烹もいいけど、やっぱり、「ブイヤベース」っていうのが面白いって思わないですか(笑)。だって、八戸にいるのにフランス料理の事を自慢しているんですよ。オシャレなレストランで、趣向の凝らされた、見るからにオシャレな料理が出てくる。スープには魚介のダシが利いていて、最後の一滴まで楽しめる。しかもそれは、ほとんどが八戸でとれた魚介だっていう説明付きです。自分たちの住んでいる場所でとれた魚たちが、自分たちが全然知らないオシャレで美味しい料理になって出てくるんですよ。

 

W 「ブイヤベース最高、八戸最高!」ですね(笑)。ちなみに、八戸ブイヤベースは、ターゲットなどは最初に決めていたんですか?

 

それはずっと「20代~30代後半の女性」って決めていたんです。

 

W どうしてですか?

 

 一番地元の魚介と縁が遠いと思ったからです。地元に住む大体の人達は、結婚して、子供も産んで、地元のことは知っていても、魚のことは良く知らない…。そんな人達が意外と多いというのが調査をしたら分かったんです。楽しみ方を知らなければ、当然その子供にも伝わっていかないし、そうなればどんどん魚を食べる人が減っていく。寂しいですよね。だから、その世代に響いてほしかった。それで一番魚と縁が遠い方たちに届けるにはどうしたらいいかって考えて。それで出たのが「八戸とは全く接点がなさそう」で、「八戸からは到底起き上がってこなさそう」で、かつ「魚らしさも一切感じさせない」もので惹きつけようってことだったんです。

 

W 一見全く関係のなさそうなもので魅力をつたえよう、と。

 

そうです。それで「八戸ブイヤベース」にたどり着いたってのいうのもあります。そもそも、ブイヤベースっていうのが魚介をふんだんに使った漁師鍋がルーツで、沢山の魚介の使って仕上げるスープ料理なので、八戸でとれるたくさんの魚介を一度で楽しむにはもってこいだったわけです。

女性をターゲットにしていたこともあって、SNSとか職場の口コミでもどんどん広がっていって。最初は1日1食出ればいいかなとか思っていたんですが、蓋を開ければ1ヶ月半で5,000食も出ちゃって。2月3月って、モノを売る仕事の人たちは一番暇な時期のはずなんですけど、今ブイヤベースを出しているいくつかのお店の中には、その時期が一番忙しいなんて所もあるくらい。

八戸って○○取れるんですよ、

知ってました?

 

W そういう状況って、想像できましたか?

 

これっぽっちも。予算0から始めたわけだし、市とか商工会が絡んでいるわけでもない。やっといてなんだけど、正直大して注文されないんじゃないのかなって思いはありました。

 

W それがどうして…。

 

どうしてでしょうね。地元の人が地元の人の目線で楽しめるイベントがあんまりなかったからですかね。既にあるものに参加していくんじゃなくて、みんなで何かを作っていくっていう。このイベントをやっていて嬉しかったのは、感想聞くときに「美味しかったです」ってコメントも多いんですが、「このイベントをやってくれて、ありがとうございました」っていうコメントがたくさんあることなんですよね。「八戸にこういうイベントがあるなんて知らなかった。こういうものがある八戸を、誇りに思う」とか「絶対また来ます、頑張ってください」とか。泣きそうになるくらい嬉しかったです。

 

ブイヤベースを企画したのは僕らだけど、始めてから4年、これがみんなのものになっているっていう感覚がちょっとはあります。八戸ブイヤベースフェスタは毎年2か月間やっているんですけど、その間に海でとれる魚の旬は変わりますから、具材も変わっていく。同じお店でも同じ味を何回でも楽しめるわけでもないし、お店だってたくさんあるから味は無限です。

 

そんな中で、みんなそれぞれが自分のお気に入りを作っていく。楽しいですよね。「私のブイヤベース」って感覚。お店の人からしても、愛着がわいてくるわけです。「俺のブイヤベース」っていう風に。そうやって、これからもクオリティをあげていければいいんじゃないかなあ、と思います。あくまで根っこにあるのは地元。内輪のエネルギーでどこまでいけるかって考えるのが、面白いです。

子供向け料理教室の時の様子(左上)とシェフの合作ブイヤベースが味わえる『夏もブイヤベースだ!2015』の様子(右下)

提供:八戸ハマリレーションプロジェクト


 

実際にお店で提供されている八戸ブイヤベース。

提供:八戸ハマリレーションプロジェクト


 

Writter

スズキ カイト

弘前大学2年生

文庫本をコートの内ポケットに入れるのがお洒落だと思っている。

函館で青森のりんごを

物々交換してきちゃいました。

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